Hervest 17: Other Writings ; Reunion

それは、日が昇りきった、ある日の午後の話。* セビリアの閑静な商館地区に、小さな影がひとつ。その影の主は、初夏のこの地には似つかわしくない、顔を隠す程の外套に身を包み、背中には大きな麻袋を背負っている。埃と、何やらよくわからない薄茶色の滲みに塗れている草臥れた外套、そして汗と潮風の混じる如何ともしがたい臭い。物乞い、と見てもおかしくはないその容貌に、すれ違う人々は皆、眉を顰め蔑みと忌嫌の一瞥を与え...

Hervest 16: Other Writings ; Bloodline

相変わらずの書類の山に、思わずため息を漏らす。商会の財務から商館の掃除に至るまで、商会秘書の仕事というのは、本当に忙しさに事を欠かない。秘書の男は、今日もまた高々と積みあがった書類の山を、どうやって踏破してやろうかと、商館の中で一人、あれこれ思案していた。「よぉ、ラーベナルト。調子はどうだい」商館に一人の男がやってきた。浅黒い肌に一筋の傷痕。小柄ながらもよく鍛錬された体躯は、その服装と腰の物もあっ...

Hervest 15: Other Writings ; A Chance

工房の朝は早い。* 水平線の向こうに杏のような太陽が浮び上がる頃、いつものように仕事場へ向かう。土地柄の冷たい風が身を引き締めてくれ、妙に心地よい。歩きながら、浮かぶ鉛色の雲を仰ぎ、短く息を吐いた。鍵を開け、表の戸を開け放ち、光を入れる。ここは我が小さき城。そして俺はこの霧の街に店を構える一介の職人だ。「さて、今日は何から取り掛かるとするかな・・・」作業用の机に目をやる。と、目に飛び込んできたのは小難...

Hervest 14: Other Writings ; Return

この香りを嗅ぐのはいつ振りだろうか。* 私はセビリアの港に立ち、行き交う船を眺めていた。造船所から聞こえてくる威勢のいい掛け声。方々から聞こえてくる、交渉ごとの類。そして酒場の方からうっすらと聞こえてくる怒号と罵声。「変わってないな、この街も」独りごちながら港を歩く。変わった事といえば、見慣れぬ服を着た航海者と、見慣れぬ船が増えた事ぐらいか。だがそれはいつもの事だ。「変わった事」に括るには平凡すぎ...

Hervest 13: Other Writings ; Afternoon at a bar

太陽の出ている今時分でも、意外と忙しいものだ。 私は酒場の隅に腰をおろして、カウンターの向こう側で忙しなく働く主人を眺めていた。芳香と共に、次々に盛られてゆく料理の数々。それを愛想のよい声と共にそれぞれのテーブルに並べてゆく給仕人。夜は疲れた航海者の腹を満たし、昼間はこうやって街の住人の腹を満たしている、ということか。その手腕に驚きと敬意を持った眼差しを向けていると、程無く私のところにも注文の品を...