09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
こんな人が書いてます

Neya

Author:Neya
PSO2:Ship6-Block09
FOnewealでフラフラしています。

このブログのバナーはこちら。




最近の記事

最近のつっこみ

月毎の記事

記事カテゴリー

商売敵もといステキサイトさま

PSO2サポーターズ!

PSO2_200x200_応援バナー02

PSO Forever ヽ(・∀・)ノ

スポンサーサイト

--.--.-- --:--|スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

その2:ある調理師の話

2012.06.11 02:18|大航海時代SS
※2009年8月14日掲載

2009081401.png


女は調理師である。



 小柄な体躯は一面、健康的な小麦色。そして、その麦の穂を連想させる金色の髪。麦浪の上には花冠を泳がせ、二つの瑠璃玉の一方には不釣合いな一文字の傷痕が走る。
欧州を遠く離れたジャカルタで、家業のためだろう食料品や調味料などの交易品を買い付けている最中だ。私は少し離れた場所に腰を下ろし、そのやり取りを眺めている。交易店の店主は、年端の行かぬ彼女の容貌に侮りの気があるのか、何やら小馬鹿にしたような口調。が、気にも留めない、といった素振りの彼女。身振り手振りを交えながら、現地の言葉で矢継ぎ早にまくし立てる。タガログ語、というそうだ。その饒舌っぷりに、いつだったか彼女が見せてくれた、鳳仙花の種が爆ぜるさまを思い出した。
ひとしきりの舌戦の後、やがて根負けしたのか、呆れたようなあきらめたような表情を見せながら、店主は契約の(と思われる)書類にペンを走らせた。どうやら交渉は成功したようだ。半ば無理やりに店主の手を掴み取り握手を交わす彼女。満面の笑みを湛えながら、
『Maraming salamat(ありがとう)!』
そう言って、船員に手早く指示を出すと、こちらの方へ走り寄ってきた。

「おまたせ!助かったよ、君が付き合ってくれて。一人じゃこんなとこ、中々来られないもんね!」
聞くと結構な大口の取引だったそうだ。満面の笑みの端から零れる白い歯が眩しい。

「気にしないで。この航海、私も楽しませてもらっているから」
その言葉は本当で、初めての土地を訪れる新鮮さに、私は身を任せている。このあたりまで遠出したのは初めてだ。欧州とはまるで違う、翡翠を思わせる海の色。脇に置いた大斧の、鈍色の半月に反射する乾いた陽射し。水兵帽を彩る羽飾りを、優しく揺らす潮風が心地よい。

「そっかぁ。あたしは3度目かな。うちのクラウディアを雇った時と、今と………。とにかく Tack så mycket(ありがとう)!」
同じように風を受け、彼女が微笑んだ。


**

 彼女に誘われるがままにこの商会の戸を叩いてから、どれ程の年月が経っただろうか。バルト海出身の私に、流暢なノルド語で話しかけてきたのが彼女だった。

『Hej, Kan jag hjälpa dig? (手伝おうか?)』

 セビリアの酒場だった。初めての長い航海にもかかわらずよく応えてくれた船員達に、労いの杯を振舞おうとした時の事である。初めて耳にするスペイン語。テーブルの隅で途方に暮れていた(彼女に言わせれば萎びたパセリのようだった)私を見かね、居ても立ってもいられなくなったという。その時の私からは北欧名産のヒースの匂いがしていた、だからノルド語圏の航海者だと思った、と彼女は言う。
 同じ言葉を話す人間が異国の地に居るというのは、本当に心強いもの。その後、私は次第と彼女を頼るようになり、気が付けば彼女の所属する商会に入会していた。金色の縮れ毛(まるで満月のような)の髪形が印象的な商会長と面会を済ませた後、晴れて商会の一員となった私は、調理師の彼女が大砲や刀剣の扱いにはとんと疎いという事を知り、彼女に恩を感じていたこともあって、軍人の道を歩むことに決めた。研鑽の甲斐あってか、今では彼女の護衛として航海を共にするようになっていた。
今回のジャカルタへの航海は、そんな護衛の旅だったのである。


***

 一通りの仕事も終え、陽も沈みかけた頃。私達二人は酒場の一角で、日頃口にすることの無いジャカルタの一風変わった味に舌鼓を打っていた。惜しげもなく使われている香辛料は、欧州に持ち帰れば巨万の富を生むんだよ、と彼女が教えてくれた。目を丸くしながら聞いている私を見ると、その話を皮切りに、いかにも調理師の彼女らしい食べ物の話が次々に飛び出した。お互いの杯になみなみと注がれた店主特製の地酒が、まるで杯に孔が開いているかのように無くなってゆく。

「お客さん、いい飲みっぷりだねぇ!(と言っているのだという)」

店主の陽気な声が響く。続々とテーブルに郷土料理が運ばれてきた。
私はタガログ語はからっきし。彼女が全て受け答えをしている。行き交うタガログ語を聞いていると、私一人が異邦人のような錯覚を覚える。それほど彼女のタガログ語は流暢なのだ。加えて、周りの航海者とも何の不自由も無く会話をしている。一応私も航海者のはしくれだから、2、3ヶ国語くらいは学んでいる。何とか会話ができるくらいだけれど。けれども彼女は基本的な会話どころか冗談まで言ってのける程。私はその習熟ぶりについて尋ねた。

「ねぇ。どうしてそんなに色んな言葉を話せるの?相当な数の言語を話せるのよね?」

聞いて、彼女は忙しなく動いていた両手を止めた。握られていたフォーク(食べかけの肉が刺さったままの)を皿に置くと、もう片方に握られていた杯の中身を飲み干して言った。

「ふふふ。今は22言語くらい話せるかな~」
彼女が得意げに言う。
予想以上の答えに驚く私を見ると、続けて言った。

「あたしがこんなに沢山の言葉を覚えようとしたのはね、前にここに来た時の事件がきっかけなんだ。えっとね・・・」


****


 その日はひどい嵐だったという。茹だる様な暑さの最中、ジャカルタに襲いかかった突然の暴風雨。港は見る影も無く破壊され、河の上流からは内陸での死者が、まるで河川輸送される丸太のように絶え間なく流れてき、それは地獄のような様相だったという。その嵐中のジャカルタに彼女は居た。他の調理師免状を持つ航海者と共に、復旧作業に尽力する人々に食事を振舞っていたそうだ(「チーズの無いピッツァなんて初めて焼いたよ」と彼女は付け加えた。)。
 異彩を放つ船がジャカルタに漂着したのは、そんな中での出来事だった。欧州の帆船とはまた違う、四角の帆にガレーのような櫂を持つ船。船が異彩なら、乗組員も異彩だった。トンスラを連想させる不思議な髪型の乗組員。
この嵐である。衣服も乱れ、破れた箇所から覗く傷も痛々しい。消耗し正に這這の体、といった様子だったという。すぐに彼らの救護に当たったが、こんな状況だ。安静に出来る場所が不足していた。被害の少なかった船は、怪我人を収容する場所として一時的に提供された。彼女の船にも数名の船員が収容されたという。
医学に疎い彼女は、船医の心得を持つ副官に治療を任せ、指示を仰いだ。それは多忙を極めたという。まるで自分は看護婦なのでは、と錯覚するくらいに。

 そんな異彩の船員達を、更に不幸が襲った。熱病である。
衰弱した体に熱病がへばり付き、そして次々と死の淵へ引きずり込んでいった。20名はいたであろう異彩の船員も、一人、また一人と減ってゆく。それにつれ、収容者のいなくなった船も一隻、また一隻と出航していった。とうとう、残すところあと一人となった船員を、彼女は自分の船に引き受けた。そんな船員の看病を熱心に続けたという。
物珍しさがあったのかもしれない。船員の髪は削り出したばかりの石炭のようで、時折開く切れ長の眼には、オニキスを思わせる黒い瞳が並んでいる。そして、欧州の人間ともアフリカの人間とも違う、黄色がかった肌。今まで見たこともない人間だ。回復したら、色んな話を聞いてみよう。もしかしたら何か、交易のタネになるかもしれない。そんな好奇心と共に、ひたすら看病を続けたという。
 献身的な(しかし幾許かの下心を持った)看病の甲斐あってか、やがてその船員は熱病から開放され、病床に別れを告げた。

*****

「その後はどうなったの?何か面白い話は聞けた?」
私は空になってしまった杯をテーブルに置いた。

「うん、それがね。彼の話す言葉が全く解らなかったんだ。その後、言葉のわかる航海者の船に乗って帰って行ったんだけど・・・たしか、東の方の国に行くとか何とか。まぁ詳しいことはわからないんだ。」
新しい酒を注文しながら、彼女は続けて言った。

「その当時はほとんど外国語は喋られなかったからね。タガログ語も、辞書をひきながらようやっと、って感じだったし」
一連の意外な答えに、思わず驚きの声を漏らした。

「あはは。驚いた?今じゃこんな風だからね。」
彼女は店員から酒を受け取りながら続けた。

「彼はジャカルタを離れるまで、あたしに色々話しかけてくれたんだけど、今言ったように何を言っているのかこれっぽっちも解らなかったんだ。もしかしたら感謝の言葉を言ってくれているのかもしれないのに。」
酒を一口飲んで、更に続ける。

「それでね、そのとき思ったんだ。一生懸命に会話だったり、意思の疎通をとろうとしてるのに、それが何一つも解り合えないなんてお互いにとても寂しい事だなってね。ジャカルタを離れる日の、船上から手を振る彼の寂しそうな顔が、今でも忘れられないな」

そして目の前のエビと香草を巻いた食べ物(結構美味しかった)に手を伸ばした。つられて私も手を伸ばす。彼はあなたの事が好きになってたんじゃないかしら?と言いかけて、水を差すようで、またそのまま飲み込んだ。

「それで、今に至るってわけ」
急に語気が明るくなる。

「そんなことがあって、君みたいな萎びたパセリを見ると、ついつい声をかけちゃうようになっちゃったってわけ」
彼女が茶化すように、悪戯顔で笑いかけた。

「もう」
私もつられて笑ってしまった。








「今度、私にもタガログ語教えてね」


「・・・・・・うん。いいよ!いい男をひっかけられるようにしてあげる!」





紫色だった空はいつの間にか烏羽色の幕を落とし、涼やかな潮風が木々のそよぐ音と共に吹きぬける。

少しだけ気だるい、ジャカルタの夜は更けていく。





おわり。




そんなこんなで、また次回。





現在課金切れです\(^o^)/
暇つぶしにどうぞー( ´・∀・`)

テーマ:大航海時代Online
ジャンル:オンラインゲーム

コメント

No title

なんという文才。。アンソロ参加すれば良かったのにぃ
ぜひ連載をお願いします♪

No title

楽しく読ませてもらいました^^
わたしも連載希望です~♪

ぱちぱち

海事や冒険とか交易のお話ではなく、言語を元にしたお話ってとても新鮮に感じたよ~(*・ω・*)
それにしてもすっごく文才あるよねえ~!うらやましい…
テンポがよくて表現力があってとっても読んでいて楽しかった!

もちろん私も連載希望で♪

No title

>みんな

連載・・・( ´・∀・`)
ネタが固まったらまた垂れ流してみます~

No title

Neya㌧の副官実装まだー?
非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。