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Posted byNeya

Hervest 13: Other Writings ; Afternoon at a bar

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2010020501.png

太陽の出ている今時分でも、意外と忙しいものだ。

 私は酒場の隅に腰をおろして、カウンターの向こう側で忙しなく働く主人を眺めていた。
芳香と共に、次々に盛られてゆく料理の数々。それを愛想のよい声と共にそれぞれのテーブルに並べてゆく給仕人。夜は疲れた航海者の腹を満たし、昼間はこうやって街の住人の腹を満たしている、ということか。その手腕に驚きと敬意を持った眼差しを向けていると、程無く私のところにも注文の品を持って給仕人がやってきた。

「おまちどうさま。はい、チュロスにオルチャータ・・・相変わらずの甘党ね。カフェテリアの方がお似合いじゃない?」

運ばれてきたメニューを前に、私はテーブルに散乱していたメモの束とペンを手早く脇に寄せた。
眼前に置かれた、この甘い芳香を立ち上らせている食べ物は、本来メニューには載っていない代物だ。私は給仕人の女の手をとり、

「ありがとう。いつもいつも、無理を言ってすまないね」
言いながら、幾許かの硬貨を握らせた。

「どういたしまして。ごゆっくり、甘党の物書きさん」

手早くその硬貨をエプロンのポケットにしまうと、女はカウンターの奥へと戻って行った。

「疲れた時には甘いものだな」
独りごちると、私は目の前に寝そべった、忌々しい程に食欲を掻き立てている悪魔を退治することに集中した。甘い香りを放ち誘惑する悪魔に刀傷を刻み付け、口の中へ放り込む。
「やっぱり、ここの主人はパティシエあがり・・・・・・間違いない」
私は、その味に確信をもってつぶやいた。

**

昼食の時間が過ぎると、まるで潮がひくようにその忙しさも随分と落ち着く。店にいるのは、昼間から飲んだくれている船乗りの類と、商談を終えた交易商、そして私くらいのものだ。

「先生、いい話は書けてるかい」

”昼食供給戦争”を無事に戦い抜き、一息ついた主人が、私に声をかけた。

「残念ながらさっぱりだね。話のタネが無いんだよ」

行き詰っていた私は、ペンを置いて答えた。

「そうかい?あれはどうなったんだ。ほら、満月のような髪型をした航海者どもが不思議な集会を開くって噂があったじゃないか」

主人がテーブルを拭きながら言う。

「あぁ、あれかい。確かセビリアで開かれるって話だったんだが・・・何でも御『枢機卿』様がその髪形を快く思ってないらしくてね。セビリアの風紀が乱れるとか何とか・・・今更風紀もへったくれも無いと思うんだが、まぁそんなわけで秘密裏に行われたって話さ。いい話のタネになると思ったんだが、全くいい迷惑だよ」

表現の自由ってものは、いつも”お偉方”の都合で捻じ曲げられるものだ。
私は皮肉をチュロスの付け合せにし、そのまま口へ放り込んだ。
それを横目に、主人が更に続ける。

「じゃあ、あれはどうだい。腕の立つ職人がこさえたっていう時計の話だよ」

「あぁ、ニュルンベルクの時計の話かい?あれはよく出来ていたな」

「うんうん。先生の話を聞いただけだが・・・ありゃたいしたもんだったって言ってたじゃないか」

主人が感心したようにうなずく。その時計は「ニュルンベルクの卵」と呼ばれる代物で、大きさは掌に収まるほど、という画期的な発明品だ。加えてそれは精巧な造りで、思わず溜め息を漏らしたのを覚えている。

「おみやげに一つ、買って来てくれればよかったのに」

給仕人がからかうように口を挟む。

「馬鹿を言っちゃいけないよ。いくらすると思ってるんだい。私のような者が買えるような代物じゃないよ」

言うと、給仕人は「わかってるわよ」と肩をすくめ、残っていた自分の仕事を片付けるために、奥へと引っ込んだ。

「面白い話なんて、そうそう転がっているもんじゃないさね」
私は溜め息と共に吐き出した。

「まぁまぁ、先生」

その時、突然違う声が私の耳に飛び込んできた。声のする方向に顔を向ける。カウンターに居た交易商だ。

「それがあるんだよ、物書きの先生。最近街に現れだした、男の幽霊の話さ」

幽霊。オルチャータの美味しいこの季節にはもってこいの話題だ。
私はすぐさま、

「主人、彼にラム酒を一杯」

先ずはこの酒場らしく航海者達の流儀に倣い、そして話を聞くことにした。










※このお話は、以前ブログに載せていた、「大航海時代ONLINE」を題材としたショートショートです。

実はこのお話。続きがあるんです。リレー小説みたいにして書いていたんですが・・・
今も読めるのかな・・・

Posted byNeya

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